INTERVIEW結ぶ手。
結ぶ手。
設計図に家族の姿が浮かぶ。
いってらっしゃいの声がする。
キッチンからはいい匂いも。
確かな感触が⼿の中にある。
実を結ぶ、満ち⾜りた暮らしが。
設計部 CADオペレーター
2020年入社
K・Y さん
K・Y
歩んできた道の始まりは、
少女時代の夢中。
K・Yさんが少女時代を過ごした部屋は、砂壁の和室だった。両親と3人姉妹で暮らす賑やかな家族。でも、彼女にはたったひとつ、不満があった。
「自分だけのタンスが欲しかったんです。姉妹で共有していた洋服ダンスに服を仕まうのが嫌で。買って欲しいなんていうわがままは、親には言いづらくてがまんしていたのですが……」
ないのなら、作ってしまおう。中学生のK・Yさんはひらめいた。
「当時、『私の部屋づくり』というインテリア雑誌を愛読していて。本棚にピンで布を貼って、洋服を収納できるようにアレンジしてみたんです。それがきっかけで、部屋の模様替えが始まりました」
何でも取っておく捨てられない性格も、作りたい気持ちに拍車をかけた。鉛筆はここ、使わなくなった教科書はここというように、使う物を選別して定位置に収納するアイデアが次々に思いつく。最初は遊び感覚だったが、物づくりの面白さに気づき、細かなことにまでこだわるようになった。
進学したのは、建築学科のある高等専門学校。設計やインテリアを学びたいと相談した担任からのすすめもあった。
「建築の世界は男性社会というイメージがありましたが、実際に入学してみると学生の半分ぐらいは女子で。建築学の基礎となる物理や数学の授業は手こずりましたが、空間やデザインを自分で作り上げていく作業は徹夜も苦にならないくらい楽しかったです」
ステージが変わっても
変わらぬ思い。消えない夢。
卒業後は、東京の建築事務所に就職した。自ら望んだ上京だった。
「オフィスビルや店舗の内装を手がける設計事務所で6年ほど働きました。最初の手取りは12万円。毎日終電で寝る暇もないくらい忙しい極貧生活。でも、その頃が一番充実していたような気がします。伸び盛りでしたから」
その後結婚し、ご主人の赴任先の長崎で一級建築事務所に転職。施工も手がける会社で人手が足らず、設計だけではなく、発注や営業、インテリアコーディネートまで、何役も任された。
「店舗や病院などの施設も多かったのですが、戸建てをたくさん担当できたことは、一つの転機になりました。いつか、自分が考えたアイデアを生かした家を作りたいという、小さな夢が生まれたんです」
しかし、K・Yさんはその夢を、諦めた。
2人目の子どもができたタイミングで退職し、建築業界からは身をひいた。
「子育てをしながら仕事にも集中する。それは現実的に難しいし、生半可な状況で続けられるほど甘くないということは、それまでの経験からよく分かっていましたから。仕事と家庭とどちらを取るか、というよくある話です。家族を優先することに迷いはなかったので、潔く辞めました」
そんな折りの、コロナ禍。一家はご主人の地元の鳥取に移り住んでいた。
「もう一度働きたいという気持ちが沸々とくすぶっていて。できることなら、建築業界に戻りたいと思っている自分の本音に気づいて、はっとしたんです。そんな時に何気なく目にした求人サイトで、アート建工を知りました。どういう会社かは分からない。建築業というだけで、ドアを叩きました。どうせダメ元だからと、面接では至極勝手なこちらの希望も伝えて」
K・Yさんが提示した勤務時間の条件は、9時〜15時半。子どもたちが学校から帰ってくる夕方までには家に戻りたいのだと、正直に話した。
「断られると思っていたのですが、希望通りで大丈夫ですと、快諾のお返事をいただいたんです。思わず、本当に良いんですか?と聞き返してしまいました。はっきりと自覚したのは、その時です。私の中で、諦めきれない気持ちがずっと残っていたのだと。夢は消えていなかったのだと」
決意を新たにした再スタート。
手が届くまでもう諦めない。
K・Yさんはアート建工の設計部に所属し、CADのオペーレーターになった。数ヶ月前からリモートワークに切り替わり、自宅で作図に励んでいる。
「アート建工は社員同士が何でも気さくに言い合える環境で、コミュニケーションが円滑です。社内チャットで作図中に気づいたことを列挙すると、設計さんやICさんがすぐに反応してくれて、良く検討して返事をくれたり、事案が改善されることも。分業化が徹底しているので、誰かひとりがワンオペ状態に陥るようなことはなく、立場や領域を超えて、メンバー全員が同じ方向を見ながら助け合っています。そういう健全な関係性が、家づくりの土台になっているように思います。良いものが生まれる、良い仕事になる、豊かな土壌を感じます。私自身も再チャレンジの思いがあり、チャンスをいただいたことに感謝して、図面の1本1本に心をこめて……毎日がとても充実しています」
そういう楽しさは、お子さんにもしっかり伝わっているようだ。
「パソコンを開いて作業していると、娘が側にきて『このお部屋はなぁに?』と、聞かれることがあります。『おうちの絵を描いているのよ』と言ってあるので、分かるように間取りの説明をします。線を描きながら、私が何か面白そうなことをしているという認識はあるようです。夢はこうやって育っていくのですね。一歩一歩が小さくても、途絶えないことが大事なのだと思います。私自身、夢中で考えて手を動かした子どもの頃の経験が、今に繋がっていますから。好きなことは、ずっと好き。その気持ちはライフステージが変わっても、色褪せない。アート建工に入ったことで、期待は一層膨らみました。胸に秘めていたことが、いつの日か、結実できそうな気がしています。そういう私の姿をいつも見ている子どもたちが、この先どこへ向かうのか。それもまた、楽しみです」
MORE QUESTION
親子で似ているところは?
小学生の二人の息子が『マインクラフト』という建築ゲームにハマっていて、時々巻き込まれるのですが、その延長上に私の仕事があるということも分かっているらしく。私自身も、図面を起こしながら、頭の中で家の中を歩き回るようなイメージがあるんですよ。平面の電気図も、ここにこんな風に照明が入るんだなとか、そこに暮らす家族の姿を思い浮かべたり。遊びと仕事の違いはあっても、親子で同じことをやっている。時間を忘れて夢中になるところも一緒です(笑)。